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【アメックスゴールド祭】アメックスがやってしまった3つの失敗

【アメックスゴールド祭】アメックスがやってしまった3つの失敗

アメックスの失敗からマーケッターが学べること

アメックスゴールド祭の強制終了で落胆しているひとや怒っている人がたくさん入るようです。中には直接電話をして苦情をいったり、状況説明してもらったりしているようで、本当にインパクトのあるキャンペーンだったと思います。そこで、他人の失敗から学ぶためにアメックスは何をどこで間違ったのか考えることにしました。

失敗1.想定していない請求が公共料金判定されないかチェックしていなかった

そもそもの一番大きな失敗はこれです。アメックスに限らずカード会社が公共料金の支払いにして欲しがる理由は、

  • 毎月安定したカード利用が見込める
  • 一度設定すると変更が面倒だから変更されにくい

という理由があるからです。なので、公共料金とは言えないような定額動画サービスまで入っているんですね。

その甘い考えが、詰めの甘さにつながったと言えます。キャンペーンの企画側に立った場合、以下のようにリスク想定します。

  • キャンペーン対象にした請求に抜け穴がないかのチェック

  • 抜け穴があったとしてもシステムでフィルターできるか

  • 請求が明細に上がる前に問題がないかをチェックできるか

これらがクリアーになって初めて企画が動き出します。もちろん、企画の時点で想定できないこともありますが、可能な限り穴がないかを考えるが普通です。そして、景品表示法として問題がないか社内の専門チームや社外の専門家に確認するでしょう。私の場合は消費者庁に確認をしていました。

結局、アメックスはこれらの検証をおそらくちゃんと行わず実施したために、公共料金と思っていない請求までも次々に公共料金に判定されポイントを加算していきました。

失敗2.上限6万ポイントに改悪した時点で収束に向かうべきだった

あせったアメックスはすぐに青天井から上限6万円に改悪します。確かに青天井はキャンペーンが始まったときから「狂っている」と言われていた条件ですから、当然変更するべきなんですが、それよりも改悪するべきは10円程度の支払いで2,000ポイントを付与してたことです。この時点でも先ほど述べました3つが出来ていないことに気付いたはずなので、早期終了への準備を始めるべきでした。後からの条件変更というのは、信頼を失うのでやりたくないことですが、やるなら2回よりも1回が望ましいです。結局アメックスは、一度改悪して、次に強制終了という最悪のシナリオでした。

失敗3.キャンペーンを強制終了させた

すごくハードランディングな結末です。危機管理がちゃんと出来ている国際企業では、何か失敗があった場合には、顧客や関連会社に迷惑がかからないように、最大限の配慮をして墜落(ソフトランディング)するのが常識です。にもかかわらずアメックスのこのやり方は、不満不平を通り越して「マーケティング担当やコンプライアンス担当は大丈夫なの?」と心配になってしまいます。このハードランディングで当たり前ですが、信頼を失いました。

カードブランドのブランディングは難しい

カードブランドというのは、イメージがとても大切です。そのためCMなどの広報戦略でも抽象的な内容でイメージだけを伝えるものが多いです。例えば、昔流行ったマスターカードのCMでは「お金で買えない価値がある。買えるものはMasterCardで」と言うものがありましたよね。クルマのスペックなど絶対的な数字のないもののブランディングが難しく、時間がかかります。さらに、アメックスはVISAやMasterCardよりも高級路線ですから、なおさらブランドイメージが大切になります。そのブランドイメージを壊したわけですからね。強制終了は、予想を大きく超える広告費にビビッて止めたのですが、そのマイナスとブランドイメージを傷つけることで今までブランディングにかけてきたお金が無駄になるマイナスとをきちんと天秤にかけて判断したのか疑問です。もちろん、アメックス全体がこんな考え方とは思えませんし、この企画をした数名の問題とは思います。

とはいえ、直接信頼を失ったのは、5月から入会したばかりの新規会員ですし、ほとんどがポイント目的で2年目解約するようなユーザーが大半だったことを考えると風評被害は限定的とも言えます。もっとも、今回の件で新規ユーザーの声が大きくなればアメックスも救済措置を考えるかもしれません。

これからのアメックスキャンペーン

羹に懲りて膾を吹く(アツモノニコリテナマスヲフク)という故事があります。

熱い吸い物で口をやけどした者が、なますのような冷たい料理も吹いて冷ますという意味から。多く、なにもそこまで用心深くなる必要はないのに、というあざけりの気持ちを込めて使う。

アメックスはこれに懲りて公共料金キャンペーンを再開することはありませんし、上限を低くしてもやらないでしょう。すでに一部の媒体経由で始まっている「〇ヶ月で〇〇万円のカード利用で〇万ポイント」という単純明快なキャンペーンしかこれからは出来ないと思います。ライバルのダイナースクラブカードも対岸の火事ではありませんので、大胆なキャンペーンは打ちにくそうです。

これからの展開を楽しみにしています。